2026.03.18
イベント?展示会
全国高校生歴史探究ポスター発表コンクール「レキタン2025」受賞作品と講評を掲載
歴史遺産学科が主催する、全国の高校生を対象とした歴史探究ポスターコンクール「レキタン2025」の表彰式は、2026年3月15日(日)、東北芸術工科大学本館1階ギャラリースペース「TUAD WINDOW」にて開催されました。以下に受賞作品と審査員の講評を掲載します。


【最優秀賞】
「釜屋治左衛門と吾妻村の道標 ?木更津に滞在した江戸の豪商と艾文化?」
千葉県立木更津高等学校
竹田千夏(1年生)、寺田亜矢(1年生)
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【審査員講評(岡陽一郎)】
近世の石造文化財は、身近すぎるあまり、見落とされがちな存在です。報告は一つの道標の研究では済ませず、各種資料と組み合わせ、分析を加えることで、同時代の交通網や物流、そして産業の分析にも切り込むものでした。その姿勢と手法は見事です。どうしても資料の数や資料に限りがある、地方史を研究する際のお手本となるものです。今後も同じ視点に立ち、地域の歴史を解き明かされていかれることを、切に希望します。
【優秀賞】
「新庄に 幸せもたらす 福雀」
山形県立新庄北高等学校 定時制
佐々木碧衣(1年生)、笹有華(2年生)、青柳凜音(2年生)
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【審査員講評(松田俊介)】
本作品は、地域で親しまれ続けてきたクルミ細工の民芸品「福雀」に着目したもので、歴史調査としても、地域振興プロジェクトとしても、非常に意義のある試みです。とくに、担い手へのインタビューを通じて、制作の背景にある想いや技術を可視化した点、自分たちで映像アーカイブとして保存を試みた点は、歴史遺産を実践的に探究しようとする果敢な取り組みといえます。今後、当時の社会情勢で作成された背景や、高い人気をもって人々に受容されてきた過程を深く掘り下げることで、より深められた歴史的考察となっていくかと思います。歴史遺産が時代によって形や役割を変えながら受け継がれていく過程からは、多くのことを学べます。
【優秀賞】
「金谷十三人衆 紡がれるべき江川の歴史」
N高等学校
信藤櫂(2年生)
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【審査員講評(岡陽一郎)】
文化財はどうやって後世に残していくかは、方法や資金、活用方法など、様々な問題を抱えています。本報告では、伊豆の国市にある国の重要文化財、江川邸の保存に、邸の主だった江川氏の家臣の子孫たちが大きな影響を与えていたことを明らかにしました。文化財と人々の記憶との繋がりという視点は、地域社会における文化財の役目や、その保存を考える上では面白い視点であり、記憶から地域性や歴史を読み説く面白さを示しています。今後のさらなる研究を期待いたします。
【審査員特別賞】
「日本における「東京ジャーミイ」」
岩倉高等学校
佐野巧武(2年生)、福原洸太郎(2年生)
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【審査員講評(志村直愛)】
戦前からの歴史を持つ、東京渋谷区にあるイスラム教モスクに関する探究です。単に建築物としての情報だけでなく、その設立から建て替えの経過や背景、またタタール人たちのコミュニティの中心としての実態やその役割などにも触れています。インバウンドの増加に伴い来訪者も増えているというこの独特な形態の建築物が、東京都心に存在する意義を解き明かしています。昨今何かと話題にもなるイスラム教ですが、日本人による正しい理解のためにも、こうした本格的、正統的な宗教建築が意義深いものであることを実感させる成果となりました。
【パレオ?ラボ賞】
「映像作品から見る鉄のカーテンの内側ーロマン?カチャーノフと「哀感」のロシア史ー」
土浦日本大学中等教育学校
遠藤咲(2年生)
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【審査員講評(中村賢太郎)】
子供向け映像作品を読み解いて、20世紀後半のロシア(当時ソ連)に生きた人々の心情を探る試みは、手法の独自性という点で良い意味で異色の存在でした。今回の成果で興味深かったのは、「共感」を呼び起こす「哀感」が、雪解けの時代だけでなく、スターリン政権時代から共通して重視される表現だったという指摘です。「哀感」表現の重視が、ペレストロイカ、ソ連崩壊を経てどう変わったか、あるいは変わらなかったか、さらに知りたいと思いました。
【奨励賞】
「刀剣という信仰ー第二次世界大戦における日本兵のよりどころー」
佼成学園女子中学高等学校
江川美碧(2年生)
【審査員講評(佐藤祐輔)】
刀剣を単なる武器ではなく、戦時中の日本兵にとっての精神的支柱や信仰対象として捉えようとする着眼点は興味深く面白い研究です。戦争史と精神文化を結びつけた点も評価できます。欲を言えば、戦時中の信仰の対象は様々あり、他の信仰対象と比較することで、刀剣に着目したオリジナリティが協調されるでしょう。
考古学的な視点で考えると、古代の文献は後世に過飾されたものも多く、その信ぴょう性を疑う必要があります。実際の遺跡から出土した刀剣がどのように扱われていたのか、より詳細に時代ごとに追うことで、研究がより深化すると感じました。
【奨励賞】
「寒冷化と中国王朝の滅亡 ―環境決定論の再考と現代社会への示唆―」
静岡県立富士高等学校
石原優(1年生)
【審査員講評(青野友哉)】
石原さんは、「環境決定論」を単純な捉え方ではなく、さまざまな社会変容の遠因となっていると考え、自らが関心を寄せる中国王朝の盛衰と絡めて説明しており、とても優れた研究といえます。特に自然環境も含めた過去の歴史から学び、現代社会の課題解決に活かそうとの意気込みは素晴らしく、今後に期待しています。なお、先行研究の成果を分離して、オリジナルの部分を強調できるとより良い賞となったでしょう。
【奨励賞】
「治安維持法施行による函館中部高校の学叢の表現への影響」
北海道函館中部高等学校
中津遙希(1年生)、杉本想(1年生)、田中壮志(1年生)、青山侑斗(1年生)、森田篤(1年生)
【審査員講評(青野友哉)】
本作品は、第二次世界大戦以前の治安維持法による言論弾圧が、地方都市にある高校の「学叢」にまで少なからず影響を与えたことをオリジナルの資料により論じており、優れた研究と言えます。特に先輩にあたる生徒の記述を研究対象とすることで、政治や社会情勢との関連を「自分事」として捉えようとする意図が感じられ、現代的意義が高い歴史探究として評価できます。本発表は平和の維持には平時の情勢変化に敏感であるべきことを示唆していると言えるでしょう。
【奨励賞】
「山形の忍びについて」
山形県立山形東高等学校
小林心結(2年生)
【審査員講評(佐藤祐輔)】
山形における忍びの存在について、文献調査だけでなく博物館での聞き取りや現地調査を行っている点がとても意欲的でよい研究だと感じました。羽黒修験と忍びの関係に注目した視点も興味深く、地域の歴史を考える上で面白いテーマです。今後は、忍びと修験者の関係を示す史料をもう少し整理すると、研究内容がさらにわかりやすく説得力のあるものになると思います。
発表資料スライドが聴衆の関心を引くようにできていて、話のテンポもよく、みなさんにも参考にしてほしいです。
